「筋肉痛の中央フリーウェイ」
「筋肉痛の中央フリーウェイ」
右に見える競馬場 左はビール工場
この道は まるで滑走路 夜空に続く
松任谷 由実の 「中央フリーウェイ」の曲を聞きながら、右側は本当に府中競馬場が見えてきた。
夕焼けを見ながら車で中央道を走っている。さっきまでインテリア工事を一緒にした4人の男達が疲れた身体で静かにユーミンの曲を聞いている。
なかなか気持ちの良い時間だ。
「途中で府中競馬場が見えてきたら、この曲を聞きましょう」と提案をしたのだ。
「今日も無茶な事に皆を巻き込んだな」と少し反省をしながら既に頭の中は工事の事で一杯になっている。
・材料は足りるか?
・周囲のクレームがないように騒音はどうするか?
・手伝ってくれる仲間達の食事はどうするか?
・作業日程は間に合うか?
・インテリア工事費用はどこまで使うのか?
・終わってどこで美味しいお酒を飲むか?
・怪我をしないように、仕事の配分をどうするか?
普段とは違う仕事をするという事は別の人間になるようなものかも知れない。
早朝家を出て、作業服に着替えて、トラックを運転して職人さんの会員制の資材ショップで買い物をする。
重いものを運び、木材を加工したり、解体をする。
自然と職人さんのようにタフな男になったような気になる。少し言葉も行動も荒くなるかも知れない。
いや、正確に言えば、そうならないとこの仕事はできない。
気が緩んだら怪我をするし、予算も工事日程も計画通りにいかない。
大変な仕事だ。
毎日現場で作業している職人さんを本当に尊敬する。
毎度インテリア工事が終わると絶対プロの設計士と大工さんにお願いすると決心する。
自分の仕事ぷりにはいつも満足できない。
しかし、自分の頭の中にあるイメージを伝えるのが難しい。イメージも明確ではないので
正確な図面も書けない。ある程度イメージを決めてから作業しながら作って行く。
一緒に仕事をする仲間たちも大変だろうと思う。
工事をやりたいときにはすぐやらないといけない仕事上の理由もある。
予算も大きな理由のひとつ。
結局、色々悩んで悩んで自分でやることになる。
そもそもなぜ、インテリア内装を変えるのか?
今のスタジオの空間に問題があるから インテリア工事をする訳ではない。
簡単に言えば、模様替えみたいな行為だ。
今回のインテリア工事の為にベルギーの間仕切り窓を購入した。
「内装は解体すると廃材になるけど、
本物のアンティークは時間が経過しても資産価値があるよ!」
Boncoteの久永社長から教えてもらった。
イメージに合う素敵なパーテ-ション扉だけど、問題は大きくて階段から3階まで搬入できるのか心配だった。駄目ならのベランダからロープで上げれば良いと思った。
約50㎏位だと販売先の方から言われたので簡単だと思った。
しかし、今日実際に受けた商品の重さは想像を超えていた。
100㎏を軽く超える。
4人でロープを引っ張っても全く微動だにしない。皆が私のような腕力がある訳でもないし、この重さでは危ないと判断をして取りあえず持ち上げるのを中止した。
皆が私の顔色だけを見ているのは分かっていた。
クレーンを利用しないと無理だと言い残して宅配のお兄さん達もすぐその場から去っていた。
彼らもこの搬入作業には関わりたくないのだ。
「できる」
そう答えて階段から搬入する事にした。
5人で1階の階段まであげて途中で動きもできなくなった。
あまりにも大きくて隙間がなかった。
みんなの顔は「 無理です。」と訴えていた。
やはりクレーンしか方法がないのか?
30万円の中古の車を購入して、2階の庭にクレーンで上げるのに同じ30万円がかかったという話をスタジオの友人から聞いた事があったのでそれは無理だなと思った。
やはり無理かな…
その時、電気工事を手伝ってくれているケンジさんが「バラしましょう」と提案をした。
まだ厚い梱包材で包まれていたので商品を見てない。
分解すれば可能性がある。
気をつけて、扉を分解して一枚の大きなガラスを外す事に成功した。一枚の大きなガラスだけでも重い。
また組み立てるのはそれほど難しくない。
ロープを使ってベランダから搬入する事に成功した。
嬉しかった。
お酒のネタがまた増えた気がする。
最近読んでいる、村上春樹さんの「 走ることについて語るときに僕の語ること」で
「小説を書く事と走ることの共通点についての内容がとても共感できた」
要するに、集中すること、継続することには体力が絶対的な条件だ。
インテリア工事を始める5日前から毎朝5kmを走る事をしていた。久しぶるに走るので急に長くは走れない。
諦めずに長距離を走る事も辛い事だけど、終わると気持ち良いものだ。
結局、体力がないと工事もできない。
帰りの車で仲間たちと一緒に松任谷 由実の 「中央フリーウェイ」の曲を聞きながら、見ている夕焼けは特別なもの。
手がパンパンに腫れているけど、その痛みが達成感に変わっている。
まだまだ一日目が終わったけど、怪我をしないで最後までやってみよう。